プロジェクト概要

プロジェクト概要

クルーズトレインが、安全かつ快適に走るために
——『ななつ星in九州』に搭載された熱交換器と電気温水器

日本初のクルーズトレイン『ななつ星in九州』は、2013年から運行が始まり、今もなお予約が殺到する人気の寝台列車だ。ラグジュアリーさが魅力のこの車両に、中村自工の技術が力を添えている。当時、福岡営業所でななつ星を走らせるために奮励した現第二事業部 調達部 調達一課のN課長が語る。

過去の実績から来た依頼

過去の実績から来た依頼

——中村自工の技術は、ななつ星のどこに採用されているのでしょうか?
「発電エンジンを冷やす熱交換器と、14部屋ある客室の中にはシャワーがあるのですが、温水を出すための電気温水器を製造してほしいという依頼がJR九州様からありました。私は営業としてその注文を受け、当社技術部門(以下技術)とグループ会社の工場(以下工場)に設計と製造を依頼しました」
——熱交換器は、どの車両についているのでしょうか?
「1号車のラウンジカー『ブルームーン』と2号車のダイニングカー『木星』の床下に電気を供給する発電装置(エンジン付き)があり、その発電エンジンを冷やすために熱交換器がついています。気動車(エンジンを搭載した車両)、その他のエンジンやトルクコンバータのオイルや水を冷やす熱交換器は、当社の製品が99%の割合でJR各社の車両に搭載されています」
——温水器ですが、客車の中にシャワーがあるというのは他に例があるのでしょうか?
「現在は運行が中止されてしまいましたが、寝台特別急行列車の北斗星やカシオペアにはありました。それらの車両に電気温水器を載せた実績があるということで、今回もお声掛けいただいた次第です」

手探りからのスタート

手探りからのスタート

——最初にこの注文を受けた時、社内はどんな雰囲気でしたか?
「“どういったものを作るのだろう”“どれくらいのスペースがあるのだろう”ということが全く見えない中でのスタートだったので、まず納期に間に合うかという心配がありました。運行が2013年10月からということは決まっていて、お話をいただいたのが2012年頭でしたから、時間的には1年半くらいありました。しかし実際は納期ギリギリまでの作業でした」
——Nさんの実務としては、どういう形で展開していったのでしょう?
「営業としては技術および工場とお客様との橋渡し役ですね。お客様の要望を技術に理解してもらうことが一番の仕事でした」
——どんな要望があったのでしょうか。
「例えばシャワーの場合、一度水を沸騰させて除菌をしなくてはいけません。でもシャワーからいきなり熱湯が出てはいけないので、温度を下げて供給しなければならないんです。技術が試行錯誤して、設計に約1年はかかりました。あとはタンクの大きさも、確定するまである程度の時間を要しています。タンクが大きければ大きいほど貯水量は増えますが、当然ながらスペースは限られていますから、必要最小限にしなければなりません。そこで、人が一度のシャワーでどれくらいの水量を使うのかデータを集めました」
——熱交換器も、ななつ星ならではの仕様がありましたか?
「やはり騒音対策ですね。熱交換器には冷やすための空気を送るファンがあるのですが、回転が高くなればなるほど音が大きくなるのです。何デシベル以下という数値が決められていたので、羽根の形を変えたりして対応しました。乗客の方が“うるさい”と感じることは、絶対に避けたいことでしたから」

自然と起きた拍手喝采

自然と起きた拍手喝采

——大きなプロジェクトを遂行するため、どんなところに苦心されましたか?
「やはり伝達の難しさですね。お客様からの要望を技術および工場に伝える、技術や工場からの要望をお客様に伝える…、そこはかなり難しかったです。特に納期に関しては、とても気を配りました。JR九州様が運行日をプレス発表したので、絶対にその日にスタートさせないといけません。最終日が決まっている中で、そこに持っていくための動きをどうしなければいけないか、自分の中で何度もシミュレーションしながらスケジューリングしました」
——プロジェクト中の、最大のトラブルは?
「温水器の水が漏れる…という言い方が正しいのかはわかりませんが、水が沸騰すると多少溢れるのは許容範囲なのですが、その量が多いということがありました。理由を調べたところ、車両にとりつける直前に配管の位置が悪いということが判り至急手直しを行いました。技術スタッフだけでは手が足りず、営業スタッフも手伝いました。」
——車両が完成した時は、いかがでしたか?
「車両ができあがって車両センターから車両が出て行く…、我々は“出車(でぐるま)”もしくは“出場”と呼ぶのですが、その姿を見た時は胸にこみ上げてくるものがありました。数百人の関係者と共に出車を見送ったのですが、自然と拍手喝采が起こったほどです。この仕事に携われたことに誇りがありますし、全ての車両が安全に運行するため、頑張っていかないといけないと改めて感じました」

営業の仕事を再確認できたプロジェクト

営業の仕事を再確認できたプロジェクト

——このプロジェクトに参加できたことに対する喜びはありましたか?
「当時は余裕がなくてそこまで考えられませんでしたが、走っているななつ星を見た時は感動しました。その時にやっと“やって良かった”と実感しましたね」
——また、経験して良かったこととは?
「自分が営業としてやってきたことの力が見いだせたのではないかと思います。入社してまだ10年そこそこですが、このプロジェクトが始まるまでの6〜7年の間に培った人脈のおかげで、困った時は助けていただいたり、情報を各所からいただけたからこそ、うまくいったのだと感じました。誰も何も知らない状況でやっていたら、スムーズには進んでいなかったと思います」
——自社スタッフの体制も、心強かったのではないかと思いますが。
「そうですね、特にフットワークの軽さはありがたかったです。みんな、よく動いてくれました。そしてきちんとマジメに考えてくれ、自分の意見を伝えてくれたことは、本当によかったと思います」
——このプロジェクトを経て得たものとは?
「“営業とはこうあるべき”ということを再認識しました。原点に戻れたというか、一から車両を作る作業に携わったのが初めてだったので、とてもいい経験になりました」