プロジェクト概要

縁の下の力持ちが支える安全
——東京スカイツリーの頂部制振装置に使われたユニバーサルジョイント

中村自工の主力製品であるユニバーサルジョイントは製鉄所や製紙会社、鉄道車両などに使われることが多いが、実は意外なスポットにも設置されている。今や東京、いや日本のランドマークと言える東京スカイツリーに内包されているのだ。東京スカイツリー内の頂部制振装置に使われているユニバーサルジョイント製作に携わったF工場長と、F主任に語ってもらった。

ユニバーサルジョイント製作依頼の概要

ユニバーサルジョイント製作依頼の概要

——お2人は、どういう形でこのプロジェクトに携わったのでしょうか? F工場長「当時、私は第一事業部業務部に勤務していました。東京スカイツリーの案件を広島営業所の営業が受けてきましたので、ユニバーサルジョイントの製造工場である深川製作所(グループ会社)への発注や納期管理などのハンドリングを主にやっていました」 F主任「私が携わった製作過程は1ヵ月くらいでした。依頼があったユニバーサルジョイントの設計です」 ——このプロジェクトの発端は? F工場長「三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社(現社名=三菱重工メカトロシステムズ株式会社)様からの、“東京スカイツリーに設置する頂部制振装置にユニバーサルジョイントを使いたい”というご要望でした。頂部制振装置に使われたのはユニバーサルジョイントの『固定型シングルフランジ形』で、装置のおもりを鉛直支持し、振り子のように360°可動する機能をもたせるために用いました。強風を受けると、放送用送信アンテナを取付けているゲイン塔が特定の風速で共振することがあります。その揺れを抑えるのが頂部制振装置です。 F主任「頂部制振装置の土台の上にユニバーサルジョイントがあって、その上におもりがあるんです。おもりがゲイン塔と逆に振れることで、揺れを抑えるんです。頂部制振装置は2基設置されるので、ユニバーサルジョイントも2つ必要でした。また、可動角度が従来の倍はほしいという依頼でした」

製作にあたっての検討を開始

——どういう形で、製作を進めましたか? F主任「特注品ですので、まずは作れるかどうかの検討から始まります。標準品が使えるかどうか、使えない場合は1から全部削りだしていくのか、標準品の素材を使って可能なのかなどを検討していきました」 F工場長「設置場所が620mと625mだからと言って、我々のやることに差異はありません。お客様から要求されるスペックに対して、満足できる製品が作れるかどうかという問題なのです。その際、標準部品の組み合わせだけで使えるのか、それがダメならスペシャルなものを使えるかを検討していきました。また可動角度を倍にすることで、干渉する部分が増えます。そこを削りこんでも問題ないのか、削って薄くすることによって強度がもつのか、強度が問題ない場合はそういう加工が工場として可能なのか、などの検討をしました」 F主任「最終的に大きさが外径50センチ、高さが70センチくらいで重さが700〜800キロくらいのものと、それより1サイズ小さいものを製作しました」 ——それだけ大きなユニバーサルジョイントを作ることは、よくあるのですか? F主任「さすがにこのサイズで、ここまで大きく曲げるものはそうありません。ただ、お客様のご依頼に沿えるよう考えることはいつもの作業ですので、それほど苦労はしませんでした」

頂部制振装置つり上げのニュースを見て実感

制振装置つり上げのニュースを見て実感

——東京スカイツリーは無事完成し、その安全をユニバーサルジョイントが担っています。 F工場長「我々の製品…、ユニバーサルジョイントも熱交換器もそうですが、基本的に表に出して見せるものではない、縁の下の力持ちです。でも東京スカイツリーのように世の中で華々しく宣伝されて、世界から注目されている建造物に当社の製品が採用されたことに関する誇りは、やはりありますね。やっている作業は同じですが、そびえ立つようなところに設置されているとなると、面白いもので妻帯者は家族に自慢できるんですよ。“お父さんの会社の製品が、東京スカイツリーに使われているんだぞ”と」 F主任「東京スカイツリーの建設中に、設置のために頂部制振装置をつり上げたことがニュースになったんですよ。それを見た時に“ああ、これに携わったんだな”と実感しました」 ——東京スカイツリーにその後、昇りましたか? F工場長「観光客として、昇りました。いやぁ、気持ちよかったですね。内心、誇らしかったですし」 F主任「僕、いまだに行けていないんです」 F工場長「せっかくだから、行っておいでよ」 F主任「そうですね、昇りたいです」

この経験が、大きな財産に

——このプロジェクトに関わったことで、得たことはありますか? F主任「機械加工の勉強になりましたね。これだけの角度の大きさは誰もあまりやったことのない作業でしたから、工場の現場へ直接話を聞きに行ったりして経験が積めました。この作業を経験したことで、その後の特殊品の作業も早くできるようになりましたし、“これはこうなるな”というイメージができるようになりました」 F工場長「会社としての意義は、公共の設備に我々の製品がまた違った形で採用になったことで、販路開拓の先駆けになったと思います。ユニバーサルジョイントが建築物に使われることはなかなかないですから、そういう分野に入っていく1つのきっかけになったと思います」 ——チャレンジ精神の結実でもありますね。 F主任「入社して2年目で、この仕事に携わったんですよ。そんな若手でもこんな大きな仕事にチャレンジさせてもらえるのは、本当に嬉しいですね」 F工場長「自分の夢を実現できるかどうかは、自分次第だと思います。当社は、その夢を叶えるチャンスを与えてくれる会社だと思います。チャンスをもらった後、いかに自分が力を出して、道を切り拓いていくか。若い人にはぜひ頑張ってもらいたいと思います」